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COLUMN

2020.10.16

金継ぎを始めて10年 継ぎ-繕いへの道は続く

  • テキスト:藤野佳菜子

現代風から伝統工芸の漆継ぎまで行なう金継ぎ者として活動されている藤野佳菜子さんによるエッセイです。割れてしまった茶碗や器をただ修繕するのではなく、「新しい景色」を与える金継ぎ。金継ぎの魅力、修繕を通して引き継がれる心などについて綴られています。

今でこそ“金継ぎ”をキンツギとすんなり読んでもらえるようになりましたが、私が金継ぎを始めた頃はカナツギ?とか呼ばれることも多々ありました。

エコやリユースなどの活動も後押しして、今や金継ぎは少しずつ市民権を得ているようです。

金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を漆で継ぐ日本古来の伝統工芸です。その歴史は茶の湯が盛んになった室町時代(14世紀〜16世紀)に遡るといわれ、茶道の世界では器の継いだ部分を「景色」と呼び慈しんで参りました。

私が最初に知った金継ぎは、漆を使わず1日で出来る「現代風金継ぎ」というもので、何ヶ月も割れたままにしていた器が本当に1日で直ったので、それは感激したものでした。

恥ずかしながら順番が逆で、その後、漆を使用し時間もお金もかけて直していく漆継ぎを勉強する事となったのです。

この、ある意味とてもとても地味な作業を続けられる理由は、

①かなり集中出来るという事。
②とても需要があるという事。
③しかも大変喜ばれるという事。

美術館などで金継ぎを施された茶器を鑑賞していると、普通の生活とは隔たれた存在と思っていましたが、使っているとやはり割れるのです……欠けるのです……

それもお気に入りに限って 泣

先日、お子さんがお気に入りの茶碗を欠いてしまってとのご依頼がありました。その茶碗にはウサギの絵が2匹とお子さんの名前も描いてありました。
そこで、お直しした箇所に小さなウサギの絵を足し、3匹に仕上げてお送りしました。

するとウサギの茶碗をギュウと掴んだ満面の笑みの女の子の写真と共に、このような文章が送られて来ました。

“いま5歳ですが
もういろんなことがわかってきているので
器は割れたら捨てるしかないんじゃなく
こうやって継いで、さらにかわいくなって
大事に使っていくものだということを伝えていきたいです。”

このメッセージは私の心の糧に、そして指針となり、女の子の満面の笑みは宝物となりました。

そんなこんなで徐々にお直しのご依頼も増え、ワークショップのお誘いも増えて参りました。
現在は1dayレッスンとして現代風金継ぎのワークショップを開催、私自身がそうだったように漆継ぎへの入門編として提唱しつつ活動中です。


スパイラルが主催するエデュケーションプログラムSpiral Schole では、藤野さんによるオンラインでの現代風金継ぎのワークショップを開催いたします。
2020年10月28日/11月14日 開催
現代風金継ぎ入門〈オンライン〉

PROFILE

  • 金継ぎプリュス
    藤野佳菜子

    美大卒後、グラフィック・アクセサリーなどの商業デザインに携わり、現在は金継ぎを主軸として国内外の展示会に参加。現代風から伝統工芸の漆継ぎまで行なう金継ぎ者として活動。
    プリュス=プラス(plus)の仏語読み。貴方の生活に金継ぎをプラスしてみては…というメッセージです。

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