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COLUMN

2020.12.21

TEXTILE JAPAN for SPINNER MARKT

  • テキスト:宮浦晋哉(TEXTILE JAPAN)

「TEXTILE JAPAN FOR SPINNER」を連載している宮浦晋哉さんによるコラムです。産地のテキスタイルを紹介する普段の活動や、12月にスパイラルで開催する展示販売イベント「Spinner Markt」にご出品いただく一般的にはあまり目にすることのできない珍しいテキスタイルの背景や魅力について綴っていただきました。

日々の生活に欠かすことのできない服。その素材となるのが織物や編物です。これらは日本の東西南北各地に広がる、さまざまな背景を持った産地から生まれます。そして、その風土や地域文化の違いから生まれた特徴の幅広さこそが、日本のテキスタイル産業の面白いところ。僕が代表を務める株式会社糸編 では、そういった各産地の工場を巡り、たんまりと取材させていただいた魅力を、ウェブや書籍、展示会など各チャンネルで発信してきました。「産地の学校」という学びの場や、産地ツアーなどの開催も行っています。

そのなかのひとつのプロジェクトが「TEXTILE JAPAN」です。主な活動は、日本全国選りすぐりのテキスタイルをデザイナー向けに紹介する展示会を定期的に開催したり、ウェブライブラリーとしてインスタグラムでテキスタイルの紹介をしたり。ときには、日本のテキスタイルを求める海外のデザイナーへ輸出なんかもしています。

このように、どうしても業界内での活動が多くなるテキスタイルの仕事ですが、今回のSpinner Markt出店にあたり、より多くの人に産地の特徴が色濃く表れた生地に触れていただきたい想いで、全国から集めてきました。その数、おおよそ60種類。なかなか市場に出てこないラインナップをご用意できたと思います。というのも、今回多くを占めるのが「開発反」と呼ばれる生地。つまり、産地の工場の方々が頭と感性を捻らせてつくった試作で、大量生産はされずに工場の中で眠っていたものなんです。生地によっては、数十年前に作られたデッドストックなんてものも。改めて、ご協力してくださった産地の皆さんに心より感謝申し上げます。

また、会場では生地を直に触って体感していただけますし、それらの生地を用いて製作したバッグも壁にずらーっと並べて販売します。生地自体の販売も、手に取ってもらいやすいよう、1mから準備しました。生地を結ぶ紐も伝統織物である「真田紐」ですので、気に入っていただけたらと思います。そんなテキスタイルの一部を6点ほど簡単にご紹介します。

左:今のシーズンにぴったりなカラーリングの二重織によるクレイジーチェック。タテ糸とヨコ糸がそれぞれ2種類ずつ使われ、それらが交差して表面に出るか裏面に出るかで、テキスタイルってこんなにも彩り豊かな表情をするんです。バッグや小物類をつくってギフトとして贈ってみては。

中:シャンブレー(タテ糸に色糸、ヨコ糸に白糸を使った平織り生地)だけど、よく見るとタテ糸に青と黄色の2色の糸が入ってる。なので、一見緑色の生地も角度を変えて見たら青にも黄色にも。織物の楽しさが詰まってますね。くしゃっとなったときもまたかわいい。シャツにもおすすめ。

右:タテ糸が高密度で入った、岐阜のタケコシさんによる生地。尾州一帯から愛されていたものの、今は廃業されてしまい、お世話になった感謝も込めてご紹介させてください。シートベルトのようなハリのある素材感は、セットアップなんかつくったら相当かっこいいだろうな〜。

左:まるで本物の羽根のような風合いにリッチな雰囲気が漂う立体的なデザイン。機械では表現が難しいため、意図的に飛ばしたヨコ糸を手切りしていますね。カットジャカードの技法が光ります。まさに開発反ならではの試みが目にも楽しくありませんか?スカートなんかにいいかも。

中:某ブランドのようなプリーツ感が美しいテキスタイル。生地の組織を見るだけで、改めて生地設計の奥深さに触れられます。どのような糸でどのように織られたか、その目で見ながら考えてみるのも楽しいのでぜひ。ジャージのようにスポーティーなものをしつらえるのが今の気分。

右:僕から見るとどこで織られたのかは一目瞭然。職人さんの顔まで見えてくる、意匠糸織のスペシャリストによる逸品です。画像のとおり、表面は蛍光色を差し色にネイビーで抑えた配色なんですが、裏面はまったく違った表情を持つTHEダブルフェイス生地。創作意欲をくすぐられちゃいますよ。

そして、今回は新型コロナウイルスの影響で来場を断念される方もいらっしゃると思いまして、一部の生地をご購入いただけるようECサイトを併せて準備いたしました。厳選した50点の生地をひとまとめにしたテキスタイルブックも限定10冊で販売しているので、ぜひご覧ください。期間限定のオープンとなりますので、お早めにどうぞ。

これを機に、遊び心の詰まった産地の生地を見て触って楽しんでいただけたら嬉しいです。会場にもときどきいる予定ですので、テキスタイルのお話などできたら。


SPINNER MARKT-OUR GIFT
会期:2020年12月22日(火)~27日(日)11:00〜20:00

PROFILE

  • 株式会社糸編代表
    宮浦晋哉

    1987年生まれ。株式会社糸編代表。2012年より日本のものづくりの発展と創出を目指すキュレーション事業を開始。デザインと技術のマッチング、生産サポート、繊維産地の活性施策、コンテンツ制作などを行う。2017年より繊維・ファッション業界での人材育成を目指す「産地の学校」を開校。コロナショック後、半無人テキスタイルのショールーム、ウェブ工場見学、デジタルエキシビジョンなど実験中。

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