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連載:OrganWorks【For now note/フォーナウノート】

2021.02.01

佐藤琢哉「カリー通信🍛🍛 vol.1」


ダンスカンパニーOrganWorksが交代制で3人のダンサーの内側をそれぞれの興味から紐解いていきます。
踊る事で見えてくる事、感じているもの、聞こえる音。
それを紹介できればと思います。

1人は主宰、平原慎太郎。
彼の連載では日々生きてる時間の中で感じるものを内向し掘り下げた言葉を。
2人目はダンサー、渡辺はるか。
彼女の連載ではダンサーとして受けた言葉を身体で具現化する日々の作業から、更に自分の中に蓄積した言葉を。
3人目は佐藤琢哉。
彼の連載では、彼がこよなく愛するカレーライスを通じた身体の感覚、その土地土地への関わりを。
OrganWorks所属ダンサーの、三者三様の言葉を皆さんにお届けいたします。

OrganWorks所属のダンサー・佐藤琢哉です。
僕の連載では、ダンスについては一切触れることなく、僕が愛してやまないカリー(カレー)について、ダンスと同等かそれ以上の熱量で語ります。

では。
初回は西荻窪のオーケストラというお店について。

**********

西荻窪駅南口。
アーケードをくぐり、飲食店が立ち並ぶ通りをひた進む。
お餅屋、ラーメン屋、イタリアン、中華屋 etc…
この誘惑の多い通りも終盤にさしかかり、ふと気を緩めた次の瞬間。

異国情緒あふれる香りが…
いや、スパイス情緒あふれる香りが優雅に襲いかかってくる。
無論、足が止まる。

オーケストラ

ここが泣く子も黙る西荻の名店、オーケストラである。
そろりそろりと吸い込まれるように店先に誘われ、気が付けばドアノブに右手がかかっている。
ドアが開かれる。レトロな空間と芳潤な香りの循環。
うまい。既にうますぎる。
店内の空気で米が食べられそうだ。
まずはヒューガルデンで乾杯。
どのカレーを食べても極上なのだが、お気に入りは「ポークビンダルー」。
毅然としたポークの旨味とさわやかなビネガーの酸味がハーモニーを奏で、ピーマンがシャキッとアクセントを添える。パクチーとプチトマトで奥行を引き出し、やや固めに炊かれたターメリックライスで完全なる調和を生み出す。
うっすらと汗の浮かんだ額に季節風を感じ、脳天まで溶けてしまうような恍惚感に包まれる。
ボンヤリとした思考の中で、この世に生をうけたこと、この一皿に出会えたことに感謝する。

ありがとう。

名残惜しみながら最後の一口を頬張り、外へ出ると景色が異なって見えるのである。
異世界にトリップしたのか…。いや、違う。
曇っていた自らの視界が、流れる汗とともに晴れていっただけだ。
感じる。
この世界は美しく、そしてカレーは永遠なのだと。嗚呼ん。

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