〜未来への光を灯す、もの創りをする人たちの暮らしの光をちょこっと見せてもらいます〜
今僕たちは、経験したことのないような不安や葛藤と暮らしている。
それでもどうしようもなく生きていたいと思う。そう思える気持ちはどこから生まれてくるのだろう。その心を支える光となるものはいったい何だろう。

初めまして仁木と申します。
僕は、相方の貫井君と2人で、へんてこぼういずというコンビで芸人活動をしています。
この企画のタイトル、僕は“何々“で生きている。
“何々”を見つけるのに凄く悩んだ。
皆さんに何を紹介できるのか、、、
とりあえずノートに、自分の趣味や好きな食べ物、乗り物、天気、匂い、等々色んなことを書き出してみた。
暫くして、不純物ゼロの雪解け水の様にサラサラな鼻水が、ノートに一滴垂れた。脳味噌の限界だった。体から水分が出てきたら諦めた方がいい。
正直、生きているだけで満足だ。
なんて、更けていると、ふと机の上においてあった赤塚不二夫さんの自叙伝『これでいいのだ』を見つけた。この本は僕の人生の指南書だ。
前置きが長くなってすみません。
タイトルは『僕は、これでいいのだで生きている!』にしよう。
これでいいのだ、と言えば。
天才バカボンの中でバカボンのパパが言う台詞。
しかし、自叙伝を読むと、この言葉は赤塚さんの哲学、生き様を表している言葉だと分かる。ぜひ読んで欲しい。
生きていると、これでいいのか?と思う瞬間が結構あると思う。
ギャンブルなんかは、コレが来るんじゃないか!と、思ったら買うしかない、買ってないのに予想が当たったなんて後悔はしたくないから。
そのせいで幾分か借金ができた。借金は良くないって言われるが、これでいいのだ!
典型的な負け犬根性、上等だ。
そんな男が、「やってみたかったなぁ~」と。それだけの理由で、仕事を辞めて芸人の世界に踏み出した。これでいいのだ!
便利な言葉だ。
しかし最近、これでいいのか?と思うことがあった。
それは電車に乗る為、浅草駅に向かっていた時の事。
駅前のちょっとした広場で、ストリートミュージシャンらしき、ギターを持ったお爺さんが、数人の観衆に言った。
「誰も聞いたことのない歌、歌おうか?」
僕は素通りして電車に乗った、そして、ふと思い出して後悔しかけた。
誰も聞いたことない歌ってなんだそりゃ?どういうこと?
そんな歌が、まだこの世にあったなんて、僕は二駅先の稲荷町駅で降りて引き返した。
誰も聞いたことのない歌をまだ歌っててくれ、その歌の最後の方を少しでも聞ければ良い。どうしても聞いてみたい!聞かないと後悔してしまう!ワクワクと焦りを胸に浅草駅に戻ると、急いで広場に向かった。
まだ歌っていた。
確かに聞いたことのない歌だったが、めちゃめちゃ昭和歌謡の匂いがした。
てっきり、アバンギャルドな尖りに尖った歌だと勝手に想像していたので、冷めた。ちゃんと考えればギターのお爺さんにそれは求め過ぎだ。一応、誰も聞いた事ない歌なのか確かめたくて、隣にいたお爺さんに聞いた。
「この曲、なんて曲か知ってますか?」
「山下敬二郎だよ」
なるほど~~~~間に合わなかったか。
きっと僕が電車に乗ってる間に、アバンギャルドなバッチバチに尖った誰も聞いたことない歌を歌って、変な空気になってしまい、それを取り戻すために山下敬二郎さんのカバーを歌ってるんだ。
きっとそうだと自分に言い聞かせ、二回目の電車賃を払って電車に乗った。
知らないお爺さんのカバー曲、ある意味誰も聞いたことのない歌に、遅刻して引かれたバイトの時給も入れて1440円なり。
これでいいのだ
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