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こんにちは、小林安祐美です。
私が洋服の写真を撮り始めたのは、高校生の時。
「人と服との関係性を探求したい」この思いをより強く確かなものにしたのは大学三年生の時、祖母の服との出会いでした。
この場をお借りして、探究の過程を綴らせていただきます。コロナ禍にある今、以前にも増して様々な物事に向き合う時間が与えられたように思います。受け継がれる服、消費される服、自分にとっての服への気持ちに少しでも思いを傾けるきっかけとなりましたら幸いです。

心躍る出来事へ向かう準備をするとき、このニットへ手を伸ばす。
思い返せば、そんな時ばかり。

私が大学で写真を学んでいた頃。
中高時代の友人を、大学に招いて遊んだことがありました。
遊んだと言っても、学内の写真スタジオを借りて撮影をするという目的を持って。
両親と離れて暮らしている友人から、自分のちゃんとした姿を記録しておきたいという依頼があったからでした。
今この時にしか見られない友人の姿をどのように撮ろうか、どんな時を過ごしてもらおうか楽しみで、気がつけばその日の朝はこのニットに手を伸 ばしていました。
私の着ているニットを見た友人は笑いながら、開口一番「なにそれ!ぶら下がってるの?」ってね。
ふざけたり時に真面目になったり、撮影はお互いの遊び心満載の時間となりました。
最高の笑顔を納めた写真とともに、それは私の心の中にも色づき、消えることのない思い出です。

またある時は、大学を卒業して、職場の人のお家へお呼ばれした時や、同級生とお花見をした時、デートをした時、、
そんなあれこれのワクワクする時、このニットは私の純粋に楽しむ心を後押ししてくれました。

 

ちなみに後ろ姿のこの子、何をしているように思います?
鉄棒?でも宙に浮いてる、、手すりにぶら下がってる?これは、、頭の中で様々な憶測が飛び交います。しかし、その真相は製作者にしかわからな い、、!
ただ、私がはっきり言えることは、見ているだけで楽しくなるということ。

大学へ向かうあの日、友人に会う前に祖母の顔を見ようと家へ立ち寄った時のことを覚えています。

「あ~!かわいいねえ、やっぱりねえ。この女の子~。」
と私よりも先に後ろ姿のこの子に向かって話しかけていて、不意を突かれて思わず笑ってしまいました。
そして、それほどまでに愛着をもたれていたものなんだと実感。まるで纏っている私まで愛に包まれているよう。すごく温かい気持ちになりまし た。

祖母はこの子とどんな時を過ごしてきたのだろう、ワクワクしていたかなあ。

 

太めの糸でしっかりとしたウール素材。
ボディはコンパクトで、丈は短く袖と首が長く取られている。
遊び心や幼さのあるデザインに、女性の美しいラインをみせるシルエットを兼ね備えている。

これ、なんて素晴らしいのだろう。そんな人がいたらなんだか魅力的だなぁなんて、人に例えて憧れなんかしちゃってる。
ベースの青色や、後ろ姿のこの子のお洋服、咲いているお花、芝の色、前足をあげているワンちゃん。
ケミカルな色味の組み合わせだけれどその配色のセンスは私の心を捉えて離しません、出会った時からずっと。

さあこれからも、心躍る出来事をこのニットとたくさん過ごしていくよ。
どんな時が待っているのか楽しみでたまらない。
あれ?もうワクワクしてるじゃないの。

日々の楽しみを膨らませ、後押ししてくれる祖母のお洋服たち。

 

ハマちゃんの大切なピースがまた一つ、こうして私に受け継がれました。 

PROFILE

  • 小林安祐美

    1993年生まれ、東京都出身。写真家。
    2016年 日本大学芸術学部 写真学科卒業。大学在学中から、人と服との関係性を追求した作品を制作。品川キャノンギャラリーにて卒業制作
    「時を纏う」が選抜され展示を行う。
    2016 – 2019年までmina perhonenによるセレクトショップ「call」に勤務。販売・Instagramやイベント時の撮影を担当する。
    2019年秋に単身渡英 現在、新型コロナウイルスにより帰国。

  • 空気の日記
  • エマらじお
  • 交換日記 凪
  • utakata
  • Spiral Schole
  • 妄想ヴォイスシアター
  • アトリエおよばれ
  • TEXTILE JAPAN FOR SPINNER
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