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空気の日記

鈴木一平

  • 4月16日(木)

    二度寝して、両方とも夢を見る。一度目は職場で、上半期の実績を報告する夢。目が覚めて、それを夢だと認識する前に眠りに入ったせいか、次の夢でも仕事をしていた。そのうち、さっき伝えたのは夢の実績だったと気がついて、急いで正しい数字を上司に告げると、正しさの感覚だけが、二度目の夢から覚めたあとも残り続けた。
    午前中は実績資料の作成。異常値が出たので、勘で直す。上司に報告後、入浴。昼すぎに取引先と電話。直近の売上を共有したあと、ベランダに集まってくる鳥の話で盛り上がる。その流れで実家の話になり、電話口で伝えられる言葉から、先方の家のようすを組み立てる。
    このあいだ取り壊しがはじまって、バラバラになった木材の画像が両親から送られてきた。天井裏の梁が真っ黒になっている。雨もりを受けて腐ったのか、もともとそういう仕様だったのか。たずねると、屋根が茅葺きだった頃の煤だといわれる。慶応4年から記録がつけられた。150年近くのあいだ、柱まわりを残したまま屋根をすげ替えて、改築をくり返してきたという。茅葺きの屋根は10年ごとに取り替えられて、トタン屋根なら20年ごとに塗り直されるらしい。一度だけ、屋根が黒から赤へ塗り直されるのを見たことがある。地震のときは玄関があたらしく建て直された。家はさまざまな部分からできていて、それそれがちがう寿命を生きている。細胞のように代わる代わる中身が交換されていくなかで、骨組みだけはいちばん早くここにいて、最後まで同じ場所に立っていた。
    夜、プロパーの人に激詰めされる。むかしは外にお風呂があって、よく薪割りを手伝わされたと父から聞いた。庭の隅にコンクリートで埋められた空き地がある。作業スペースかなにかとおもっていたそこは、父にはいつか風呂場だった名残りとして眺められていた。薪はいまでも離れの奥に積んである。

    ※実家から家の建て替えについての連絡が絶えない。7日に出た緊急事態宣言の対象区域が、7都府県から全国に拡大する。

    東京都・高田馬場
  • 5月9日(土)

    昼食を買いに外へ出ると、向かいのアパートの駐車場で、女の人が電話をしながらしずかに泣いていた。会話もなく、ときどき鼻をすすって、向こうの言葉を噛みしめるようにちいさくうなずいている。見ないふりをして通りすぎながら、あれは人が死んだときの泣き方だと、わけもなく納得していた自分におどろく。当時は祖母の一周忌と重なって、そういう目でものを見るようになっていたのかもしれない。ちょうど去年の今ぐらいの時期で、年号が変わる前のことだった。
    午前中は洗濯と爪切り。先日は排水溝が詰まり、水の問題に悩まされたものの、今回は滞りなく終わる。足の爪からにおいが消えていた。やり残した仕事を進めた結果、資料の体裁が崩れはじめたので、部屋の掃除に移行する。すこし前になくしていたスマートウォッチが見つかり、身体のデジタル化に取り組む。体温(36.3)と合わせて脈拍(72)や血圧(126-66)、呼吸数(19)を計測し、同期に報告。体温から今日の感染者数(東京都、36人)を引くと0.3になるね、といわれる。全部足すと289.3-229.3(253.3-193.3)になる。
    瓦礫が取り除かれて、まっしろな更地の上に基礎が組み上がり、いくつもの細い棒に支えられながら、あたらしい家のかたちが浮かび上がってくる。実家から、裏山に生えていたもみの木の画像が届いた。建て替えのついでに切り倒す話になったという。裏山の木のなかでもいちばん背が高く、おそらく家が建つ前からそこにいて、枝から枝へ、たくさんの鳥が鳴きながら飛び移っていた。もみの木は元気そうに見えて、内側が空洞になりやすく、すこしの衝撃でも倒れる可能性がある。暗闇のなかで広がっていく、空っぽの幹の内側について考えた。小さい頃に閉じ込められた蔵のなかを思い浮かべる。耳をすませると、居間のテレビから楽しそうな声がときどき聞こえた。
    クレーン車を使うのにちょうどいい場所がなかったので、根本から一気に切ることにした。まわりに酒と塩をまいて、業者の人がチェーンソーの電源を入れると、刃が踊るように回りはじめる。しばらくして、あたりの杉の枝がバラバラと音を立てて散らばり、空が明るくなった。草の上に開かれた木の断面には、幹のかたちを鏡のように写した年輪が、ぎっしりと詰め込まれていた。

    ※宮城県は9日、新型コロナウイルスに感染し、県内の医療機関に入院していた80代男性が死亡したと発表した。新型コロナによる同県内の死亡者は初めて。

    東京都・高田馬場
  • 6月1日(月)

    堀井一摩『国民国家と不気味なもの』(二〇二〇年、新曜社)によると、山県有朋は明治天皇への意見書「社会破壊主義論」(一九〇八年)のなかで、「社会主義」を《国家社会ノ存立ノ根本》に対する《病毒》と形容している。《今其ノ病根ニ向テ救治ノ策ヲ講スルノ急務ナルト同時ニ其ノ形体ヲ具スル者ニ対シテハ国家社会ノ自衛ノ為ニ最モ厳密ナルノ取締ヲ為シ此ノ病毒ノ瀰慢ヲ防キ之ヲ禁圧根絶セサルヘカラサルナリ》。
    山県は《病》という修辞を用いることで、「社会主義」が国体という巨大な政治的身体に外から入り込み、その全体性を蝕む排除すべき対象であることを仄めかしているが、同書はこの語が選ばれた背景として、貿易により国外からもたらされたコレラの蔓延を指摘している。そして、「伝染病」と「危険思想」の喩的な重ね合わせは、単なる修辞の問題にとどまらない。同書の指摘をさらに続ければ、医療行政は厚生省設置の一九三八年まで内務省の所轄であり、当時のコレラ対策は警察を主体として行われていたという。警察はコレラ患者に対して強制的な隔離措置や監視を行い、文字通り彼らを「犯罪者のように」扱っていたらしい。つまり、防疫対策と「危険思想」対策は、構造的にも認識的にもきわめて類似していたというわけだ。
    「社会破壊主義論」の提出から翌々年の一九一〇年、大逆事件が起きる。明治天皇暗殺計画の疑いによる「社会主義」者らの大検挙は、宮下太吉が爆発物取締罰則違反の疑いで連行された五月二十五日に始まる。三十一日には松室致検事総長が事件を刑法第七十三条(大逆罪)に該当すると認定し、六月一日には幸徳秋水と管野須賀子が逮捕される。最終的に逮捕・起訴された人数は二十六名にのぼり、うち二十四名が死刑判決を受けた(実際の執行は十二名)。なお、当時は社会主義・無政府主義が厳密なかたちで区別されておらず、「社会主義」という語は両者を含意する。
    ところで、スーザン・ソンタグは『隠喩としての病』(一九八二年、みすず書房)のなかで、特定の思想や人種に対して「共通の悪しき敵」のイメージを付与するために《病》の喩を用いるのは、とりわけ《全体主義》的な国家において見られる傾向であると述べている。代表的な例として、彼女はアドルフ・ヒトラーがユダヤ人に対して用いた《結核》の比喩などを挙げているが、果たして《病》という喩にふさわしかったのはどちらの方なのか。そう考えると、山県によって《病毒》と呼ばれた「社会主義」者よりも深刻な《病》に陥ったのは、その後の大日本帝国だったといえるだろう。病名は「超国家主義」と呼ばれる。そこでは国民全員が天皇を頂点とした国家のもとに結びつけられ、個々人の精神が「億兆一心」を体現すべく一点に集約されていく、という形式が取られる。その感染規模は「社会主義」をはるかに越えており、たとえば大逆事件の同時期に誕生した口語自由詩についても例外ではなかった。第二次世界大戦期において発表された口語自由詩は、戦意昂揚詩と呼ばれる病的な熱を帯びた形式を伴い、敗戦を契機として無症状化したものの、その後も一定の間隔を置いてたびたび類似の症状や、それに対するアレルギーのような反応が確認されている。
    ここで《病》という語は、制作者が抱えるゆらぎや複数性を単一的なものへと収束させる判断や表明の形式が持つ力であり、それらによって可視化された精神を意味する。とはいえ、病の比喩に基づく詩史の解釈は、状況そのものを詩の制作主体として中心化するタイプの認識と、そのつどの制作に内在する倫理的・能動的な思考の軽視を招きかねない。加えていえば、そこには解釈者自らの思考が「病んでいない」ことへの無根拠な確信が付随している。
    前日に遅くまで原稿を書いていたため、始業の八分前に起床し、間に合う。五月の実績資料の作成。同僚との共有不足で、まったくおなじ資料を二人でつくっていたことが判明。次回からは事前に担当部分を決めておくことにしたものの、どちらがそれについての相談を切り出すかも、決めておく必要があったような気がする。
    資料を上司へ提出し、入浴。大家に家賃を払いにいくと、一日遅れただけなのに若干の小言をいわれる。隣の部屋の人が先々月から長野の実家に帰っていて、家賃を払うためだけに東京へ来ているという。隣人の気配がなかったのはなんとなく感じていて、その頃から謎の虫を部屋のなかで見かけるようになった。正体を突き止めようとウェブ検索を駆使したが、該当しそうな虫の名前とその名前で出てくる画像が一致せず、ゴキブリ用の駆除スプレーをかけるといなくなるので、ゴキブリの仲間だと判断する。先月から急に虫の数が増えた。原因はいくつかあるとおもう。大家がアパートの周辺に食べ物を撒くようになり、そのせいでハトやスズメやネズミ、やたらとでかいカエルが家の近くをうろついている。食事を買いに外出すると、階段の近くでカエルを踏んでしまったり、脂のようなものでギトギトに毛羽だったハトに追いかけられたりした。
    夜、キーボードを伝って謎の虫が手首に這い上がろうとしてきたので、近所のスーパーでバルサンを二つ購入し、焚く。時間まで近所を歩き回っているうちに、知らない公園を発見する。すべり台が赤いテープでぐるぐる巻きにされていて、乗り越えた跡のようなものがテープのたわみと劣化具合で確認できる。職場から電話があり、資料の内容について確認が入る。外出をとがめられたので理由を話すと、煙で追い出しても根本的な解決にならないといわれる。となりの駅まで歩いてしまう。横断歩道を渡り終えたとき、うしろから大きな声の人がやってきて目の前の人の視界を隠した。頃合いを見て家に戻り、具合がわるくなる。

    ※コロナ禍と詩についての原稿(「無症候性の形象」『現代詩手帖』2020年7月号掲載)を書いていた。EC書店の在庫が不安定になっていたので、仕事を終えて時短営業中の書店に急いで駆け込む、みたいな日が続いていた。

    東京都・高田馬場
  • 6月24日(水)

    いつもより早く目が覚めたので、遠くのコンビニで揚げあんぱんとエナジードリンクを買う。家に戻ると、公園のベンチのひじ掛けに食べかけのリンゴと食パンが置いてあった。コンビニに行くときはなかったとおもう。こしあんと炭酸の食べ合わせが悪かったのか、胃をやられる。シャワーを浴びてすこし眠り、スーツに着替えたあとで家を出る。東西線へ。アパートの前に飲み物をこぼしてできたような、うっすらと白い線が引かれてあって、近くを通りがかる人がそれを踏み越えるたび、あたりに散らばっていた虫の脱け殻がひとつに集まった。
    母親が勤めている病院の駐車場に熊が出る。親とはぐれたらしい小熊だった。小熊は車と車のあいだを隠れるように渡って、薬局の脇にある茂みのほうに消えていった。昔、友だちの家に遊びにいく途中、坂道で熊とすれちがったことがある。地元の熊は体毛が固くバサバサしていて、強いにおいがいつまでも消えずにあたりに残る。同じ年、妹の同級生が神楽の稽古の帰り道で小さな熊に追いかけられた。それから一〇年後、実家の近くにある美術館でやっていた岡崎乾二郎展を観に行って、人間の理性や芸術についての講演を聞いていたとき、窓の向こうをふつうサイズの熊が歩いているのを見た。帰りに警察が来る。道沿いの竹やぶが破壊されていた。裏手の山には崖をのぼるカボチャの蔓や四角く掘られた穴があって、金色のトンボが何匹も飛び交っていた。
    仕事終わりに会社をやめた先輩と食事。職場を出て駅に向かう途中、同期から仕事が嫌すぎる、三歳になりたい、と連絡がくる。道のあちこちで、割れた石が花のように咲いている。おたがいに暗いことを言い合っているうちに、窓のなかで抱き合っている人の姿が通りから見えた。ワンタンとビール。先輩が待ち合わせに三〇分ほど遅れる。店が閉まったあと、地下の喫茶店に移動。赤ワインのグラスを倒されて下半身が真っ赤になり、先輩の家で洗濯してもらう。シャワーを借りて、大理石の床みたいな石鹸で体を洗う。豆菓子とビール。ハングルのパッケージで味の説明が読めず、甘いことだけがわかる。寝室に天井近くまで背が伸びている木があって、先輩がテレビに話しかけると、焚き火の動画が流れはじめた。タバコをもらうと急に酒が回り、気持ちわるくなってきたので目をつぶる。翌朝、頭痛で目を覚ます。寝間着に借りたTシャツと下着、着替えを入れる用のトートバッグをもらって、代わりに昼食代を出す。親子丼。その頃になって、先輩がずっと斜め向かいの席についていたのに気がついた。駅の改札口で別れたあと、焚き火の光に照らされながら眠っている自分の写真が送られてくる。
    前回の「日記」で引用したソンタグの著作について、大学の後輩から指摘が入る。調べなおすと、該当箇所では《人種》についての記述があまり強調されていない。というより、《人種》をめぐる問いとして解釈するのは、すこし強引だったとおもう。《結核》についても同様で、ソンタグがユダヤ人に対する病の比喩も、そのあとで述べられる《癌》のほうが(ナチス・ドイツによって用いられた語として)適切だった。いわれたとおり、たしかにミスリードだったと答えると、――おつかれさまです。結局、鈴木さんも《病気》だったんですよ! とフォローされる。話の流れで、今回から書き上げた「日記」とメモを知り合いに送り、添削してもらうことになった。

    ※謎の病気にかかる。知り合いから「日記」の感想や批判をもらうようになり、生活が「日記」の影響を受けていくような印象を受けた。

    東京都・飯田橋
  • 7月17日(金)

    昨日食べた麻婆豆腐が効いたのか、痛みで目を覚ます。提案資料作成、あんかけうどん。処理が重くなった端末の整理していると、十年前に書いた文章が出てくる。小さい頃に父親から聞いた家の話を思い出しながら、いつか小説を書くときのためにまとめておいたもの。《二百年ほど前に大きな飢饉が起きて、当時この家に住んでいた人が庭に降りてきた鶴を食べて呪われたせいで、子どもが生まれなくなった。親戚の子や身寄りのない子を養子に迎えて、大人になって所帯を持つと、またべつの家から子どもをもらってくる。それを何代かくり返して、ようやく子どもができるようになったのは、曾祖父のひとつ前の代からだという》。いまなら庭に鶴が降りてくることがあっても、捕まえて食べようとはしない。もっとささやかに取り返しのつかない出来事で、解けない呪いに見舞われることもあるだろう。ゆるくなったドアノブのネジを閉め直したとき、中にいた虫を閉じ込めてしまうとか? 妹が帰省を親に打診して、断られる。前に住んでいた人たちが残していった部屋が蔵の近くにいくつかあって、入り口は木の板でふさがれていたとおもう。最後まで外の空気を吸うことなく、取り壊しに巻き込まれてしまったのだろうか。
    後輩(添削担当)から連絡がきて、手直しされた「日記」が送られてくる。すこし話したあとで、『現代詩手帖』で発表したテキストについての感想をもらう。
    ――自分は一平さんのよい読者にはなれないとおもいました。表現のなかで明示も暗示もされないこと、《無症候性》によって不可避的に表現されてしまうものとしてのコロナの《形象》という見立ては、けっこう説得的ですね。でも、この指摘は書き手の側での批判可能性を事前に牽制してしまうというか、それこそ表現の「自粛要請」をしている気がする。
    ――やっぱりそういうとこあるよね……。
    ――全体的にはおもしろかったです。山本さんも言ってましたけど、最後こう来るかっていうおどろきはたしかにありますね! でも、動員のくだりはそんなこと言われても……って感じになりました。一平さん自身がこの問題をどう引き受けていくかなんですよね。なのに、それを書き手全員の《具体的な行為の水準》を持ち出して「一般化」してしまうのは、けっこう抑圧的ですよ。
    ――詩でなにが語れるか、みたいな気持ちになれなくて。
    ――そういえば手よくなりました? よくなったら、今度みんなで集まりましょう。
    右手が突然ふくれ出したのは、六月の半ば、梅雨空の暑い日差しを避けて、台所に敷いた布団の上で昼寝をしているときだった。手のひらに熱っぽさを感じて目を覚ますと、手首の付け根のあたりから寸胴にふくれている。虫刺されの跡のようなものがまん中にできていたので、謎の虫に刺されたのだとおもう。皮膚の下には冬瓜のような青っぽい色味が入っていた。夏になるといつも体のどこかがおかしくなる。何年か前に詩集の刊行記念会を開いたときは、当日の朝に左腕の肘のあたりが紫色にただれて、笑っている顔のような模様ができた。薬をぬって包帯を巻く。会社の同期の家に泊まりにいって、その汁は抜いたほうがいいといわれる。裁縫針に除菌スプレーをかけて刺してみると、ぱっと手のひらの上に水のようなものが広がった。なめてみるとすこしだけ鉄の味がして、小学校の水飲み場の蛇口から出てくる水みたいな味だと同期がいう。夏場は外を走り回っていた子どもたちが列を組んで、順番に水を飲み干していった。

    ※病気が長引く。この頃から、外に出て食事をする機会が増えた。

    東京都・高田馬場
  • 8月9日(日)

    隣の人が拠点を地元へ移すことになり、大学の同期と後輩を呼んで退去の手伝い。隣の人の家族がトラックをアパートの向かいに停める。持ち帰る家具を荷台に積んで、捨てる家具は大家の駐車場へ運ぶ。右手が使いものにならなかったので重い荷物を二人に任せて、代わりに部屋の片付けをする。壁紙の一部がはがれかけていて、中に絵はがきが刺さっている。本棚には語学と演劇の本が多く、気になるものをいくつかゆずってもらう。お昼から始めて夕方頃には作業が済んだ。食事をごちそうになり、隣の人が思い出を話し始める。あの部屋に十三年ほど住んで、人生の三分の一近くをそこですごした計算になる。もともとは女性専用のアパートだったのに、鈴木さんが引っ越してきておどろいた。たまに大家さんに呼ばれて、鈴木さんや前に住んでた○×さんとご飯食べたけど、東京に来てそういうご近所付き合いするとはおもわなかった。一回だけ、鈴木さんとだれかがギター弾きながら大声で歌ってて、苦情入れたことがあったけど。それはたぶんオレですね……と同期がいった。
    ――(隣の人)あ~、鈴木さん朗読してくださいよ。
    ――(作者)え!
    ――詩を書いてるって、前に大家さんから聞いたんです。
    ――(後輩)一平さんとこの大家どうなってるんですか?
    しばらくして、書きかけの詩を朗読させられる。

       だ れか きて  わ  か ら
    夜道の人に冷夏の帰路が、忘れる体を分からせて
    な   い  す が     た    で
    空が指を組む、砂を固めてつくる種、わるい芽を
             ね    が  う
    つんで、鳴きながら家の屋根を描く、向こうでは
    ぴ  た り    と  や む
    冷えた石の裏を流れる息が、鳥の影を引き受けて
          あ め    を ね じま げ
    矢印のように草を打つ、その奥で眠る地面に手を
             る  あ お い
    ついて、古い器に、溶いた雨の色を重ねていくと
               か  ら     だ
    あたらしい器ができる、忘れる体が、それを叩く

    隣の人が帰ったので解散し、三人で周辺を散歩。道に迷って、見つけたラーメン屋に入る。カウンター席が少なく、代わりにテーブル席が四つある。店主はずっとニコニコしていて人当たりがいい。和服を着た女とスーツ姿の男が入ってくる。女は四十すぎ、男は還暦を迎えたぐらいの年齢に見える。店主が注文を取りに来る。女が手慣れたような感じで、――フルーツとジュースをください、と答えると、店主がよく冷えたリンゴとメロンを切り分けて、瓶に入ったオレンジジュース(?)といっしょに持ってきた。
    ――(後輩)どういう店?
    ――(同期)思い出した。なんかさ~、オレもこのあいだ飯食ってたとき、へんなことあったんだよね……。
    五月の半ば頃、同期が昔のバイト仲間と三人でお酒を飲みに行った。二軒目がビルの地下にある、こじんまりとした居酒屋だった。あるとき、飲んでいたうちの一人(Aさん)と、おなじタイミングで外のトイレに立った。入るときは気がつかなかったが、トイレの脇にガシャポンが並んでいて、全部の機体が白いガムテープで隠されていた。中に景品は入っているらしく、なにが入っているのか確認しようとしていると、Aさんがトイレから出てくる。二人で席に戻る途中で、席で待っているもう一人(Bさん)についての話をする。
    ――(Aさん)ずっと彼氏できないんだって。
    ――(同期)そうなの? いらないとおもってた。
    ――なんか、あんまり続かないらしい。前に、どうしたらいいんだろうね~っていわれて、自信がないんじゃないかって。だから、自分を好きになることから始めるって。
    ――筋トレでもするのかな。大事な話だね。
    ――でもさ~それ、だれでもいいから人殺したいっていって、自殺するのといっしょじゃん。
    すこし考えて、全然ちがうのではないかとおもった。そのとき、向こうから人が歩いてくるのが見えて、それがBさんであることがわかったので話をやめた。あいさつをしてすれちがい、同期が振り向くと、Bさんはその場に立ち尽くしたまま首だけをこちらに向けて、じっと二人を見つめていた。話を聞かれたかもしれない。煙草を吸いにいくふりをして、店に戻らず地上に出た。すると、Bさんもうしろをついてきたのか外に出てきて、見向きもせずにそのまま闇のなかに消えていった。
    ラーメン屋を出て、通りを迂回して住宅街に入る。暗闇のなかから緑色のフェンスが現れて、向こうに小学校のグラウンドが見えた。小学校の輪郭に沿って道路がのびている。角を曲がると、街灯の下でうごいている影があった。
    ――(後輩)蝉いますよ! グラウンドの土から出てきた蝉の幼虫が道路を横断しようとしていた。表面がぬれたように光っている。三人で蝉を囲うようにしゃがんで観察していると、後輩が急にマスクを外して、無表情で移動を続ける蝉の目の前に敷いた。マスクの上に乗ったので、近くの木まで運んで、蝉を幹のくぼみに引っかける。落ちないように下に手を置いて待っていると、上に向かって登りはじめた。後輩がマスクをつけ直す。
    ――(同期)えっ、蝉に使ったマスクまたつけるの?
    ――(後輩)さすがに大丈夫でしょ~七年自粛してたら!
    コンビニで酒を買って、飲みながら三〇分ほど歩くと駅に着いた。行き先が同じらしい二人についていって遠回りする。次の電車に乗り換えたあたりで記憶を失い、気がつくと終電がなくなっていた。

    ※8月に入り、コロナのニュースと並行して「戦後75年」の記事が目立った。担当日ごとの「記念日」を意識するようになる。

    東京・高尾
  • 8月31日(月)

    高校の同期と会いに上原へ。駅の改札口で待ち合わせて、同期の知り合いがやっている居酒屋に入る。出会い頭に手の包帯を笑われる。外出前に針を刺して水を抜いても、しばらくすると開いたはずの穴がふさがっていて、抜いた分の水がたまっている。腫れはすこしずつ引いているとおもう。心なしか腫れた部分は触るとひんやりしていて、右手を額に置いて眠ると気持ちがよかった。
    店員の人は、同期といっしょの劇団で芝居をしていたらしい。同期の芝居は何回か観に行ったことがあるので、店員の人の芝居もそのときに見ていたのだとおもう。高校時代の思い出話をしていると、「晩秋」(ガガガ SP)が爆音で流れはじめる。店を出て、二人で新宿まで歩く。時計台を目印にすると同期が咎めてきたので、地図を使わずにデタラメな方向を歩く。公園を見つけてすこし休んでいると、スマホにオンライントークの通知が入る。
    ――(作者)なんか大学の同期が飲み会やってる。
    ――(高校の同期)お〜、紹介して!
    ――今入るから待って!
    大学の同期と、後輩三人(一人は添削担当)がオンライン飲みをしていた。高校の同期と片耳ずつイヤホンを付けて参加する。
    ――(作者)ゲスト紹介します! (高校の同期)です。
    ――(高校の同期)こんにちは〜、お世話になってます!
    ――(後輩)どうも〜! 一平さん地元にいるんすか?
    ――(作者)新宿まで散歩してる。
    ――(添削担当)一平さん、「日記」が近づくと徘徊するやばいやつになってますよ! 来週ですよね?
    ――(作者)べつに「日記」にしようとおもって歩いてないから。
    同期がコンビニのトイレへ行っているあいだ、信号機が妙に低い場所に設置されているように感じたので、ジャンプして手が届くかどうか試す。思いのほか届かず、スマートフォンを地面に落とす。画面がバキバキに割れてしまう。スクリーンショットを撮ってグループチャットに貼り付けると、ひび割れのないきれいな画面になる。新宿を意識しながらてきとうに歩いているうちに、大学の同期の最寄り駅にたどり着く。記憶を使って同期の家の前まで行く。エレベーターで五階にあがり、同期の部屋のインターホンを押す。スマホの画面に映っていた同期がびっくりしたような顔で振り向いて、画面から消える。インターホンを何度か押す。玄関のドアが開いて、さっきまで画面の中にいた同期が出てくる。
    ――(大学の同期)隣の人いるから……。
    ――(作者)(大学の同期)の家に着きました。
    ――(高校の同期)こんにちは〜。
    オンライン飲みを続ける同期(大学)のうしろで、ベッドを占拠して酒を飲む。真面目な話をしているようなので、ふざけて暴れる。ベッドの足が折れて、衝撃で腰を痛める。本を積んで支えにしても、暴れるとすぐに崩れてしまう。残った足を切り離してベッドを床に敷く。同期(大学)が即興で曲をつくってみんなで歌う。寝るまでオリジナルの迷信を順番につくり、同期(高校)が提案した《利き手で人を殴ると寿命が短くなる》が優勝する。いやな夢を見る。
    翌朝、顔を洗って酒を飲む。三人とも暇なので、どこに行って遊ぶか話し合う。同期(大学)の提案でミヤシタパークに決まる。同期(高校)が着替えたいといったので、いったん解散してから渋谷に集まる。同期(高校)からドタキャンの連絡が入り、同期(大学) から三〇分遅れると連絡が入る。集合時間の二〇分前に着いてしまったので、家から持ってきた山田亮太『オバマ・グーグル』(2016 年、思潮社)を読む。同期がやってきて、二人でスクランブル交差点を渡る。右手に曲がり、高架下を過ぎると《MIYASHITA PARK》の文字が見えてくる。開放的な空間の向こうから人が流れるように歩いてくる。一階の飲み屋街がたくさんの人出でにぎわっている。真っ赤な色の掲示物があちこちに貼られている。笠井さんが近くにいるらしいので呼び出す。三人で四時間近く歩き回る。建物全体が巨大なモニュメントのようだとおもった。

    みんなのミヤシタパーク※

    落書き禁止「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」違反者は、処罰されます。 見つけた人は警察に通報してください。/この遊歩道の下には、渋谷川が流れています。/宮下公園は、誰もが自由に遊んだり散策できる憩いの場です みなさんが、気持ちよく使えるように お互いにルールやマナーを守りましょう/ NO SMORKING 禁煙 喫煙は指定の喫煙所をご利用ください。/お知らせ 渋谷区立宮下公園では、安全管理のため、 以下の物を使用する為に持ち込むことを禁止ます。 ご理解ご協力をよろしくお願いします。 ●花火・火薬などの火器 ●タバコ類(喫煙) ●銃及び剣類(モデルガン、模造刀、木刀、竹刀を含む) ●野球、テニス、サッカー、ゴルフ等の球技の用具類(ビーチスポーツを除く) ●テント・タープ ●のぼり旗類 ●拡声器、メガホン等 ●ラジコン等(ドローン含む) ●ブーメラン、フリスビー類 ●凧、バルーン類 ※その他、安全の支障になるものは持ち込みできません。 ※スケートボード、インラインスケートは、スケー ト場以外では使用できません。/お知らせ 渋谷区立宮下公園では、快適な公園利用のため、以下の行為を禁止します。ご理解ご協力をよろしくお願いします。 ●施設を損傷、 汚損する行為 ●焚き火などの火器の使用 ●貼紙や貼り札、または広告の表示 ●大音量の演奏や合唱、演説 ●ビラや物品、飲食物を配布 ●工作物の設置 ●寝転がるなど 来場者や歩行者の妨げになる行為 ●長時間のベンチ等の使用 その他、下記行為をしようとするときは、管理者の許可が必要です。 ・物品の販売その他の営業行為 ・業として写真又は映画の撮影など ・演説または宣伝活動をすること ・集会、展示会、競技会その他これらに類する催しのために公園の全部または一部を独占して利用すること ・募金、署名運動など ・興行を行うこと/きゅうちゃん Kyu-Chan 2020 Colliu 名前の由来は宮下公園の「宮(きゅう)」から来ています。/新型コロナ あんしんチェックインサー ビス/この施設の利用者などから新型コロナウイルスの感染が確認された場合、 接触の可能性がある方に LINE でお知らせします。/ A year in the life shibuya/Takeshita Street Welcome to Harajuku / WOMEN’S RUN/渋谷バル SHIBUYA コミュニティ BAR/純喫茶&スナック思ひ出。/力士めし萬/鶏・かしわ・焼鳥 布袋/精肉 大黒 牛 豚のアパート/魚利喜 魚貝百貨店/北海道食市/東北食市/関東食市/横浜中華食市/ 北陸食市/東海食市/近畿食市 2 /近畿食市 1 /中国食市/四国食市/韓国食市/九州食市 /沖縄食市/エレベーターのご利用は 最大 4 名 とさせていただきます。 できるだけ 離れてご利用ください。/&BASE WORK STYLING / adidas / LOUIS VUITTON / GUCCI / TADANORI YOKOO for GUCCI / DADAÏ THAI VIETNAMESE DIM SUM / BALENCIAGA / PRADA / KITH / BEING HERE MAKES YOU ONE OF US. / or / Any 2020 Stone Designs 多様な人々、人種、ジェンダーが融合して新しい文化をつくる渋谷を象徴します/エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ COACH/KITH. TREATS. / KITH. KIDS/EYESTYLE / SOPH. / FIRST HAND / TOKiON /国籍や人種、言語、宗教問わず、花を贈る人間の心は万国共通である。/ CAFÉ KITSUNÉ/Hender Scheme スキマ/ GUCCI / VISIONARIUM THREE / Luis Vuitton “VIRGIL” NIGO / GRIT NATION / REDUCE REUSE REMAKE ムダのない未来へ adidas / adidas Belista のアパレルはユニークなシルエットで強気のフェミニンスタイルを演出/ Positive Attitude for Transformation /完全燃焼の夏にしろ REDAY FOR SPORT ROLA / BALANE/STYLE / and wander / CONVERSE STARS/SOCIAL DISTANCE SOCIAL DISTANCING /社交距離/社交距离/人との距離をあけて、 新型コロナウイルス感染症の 拡大防止にご協力ください。 2m /防犯カメラ作動中/検温実施中 感染拡大防止のため 入館時検温を実施しておりま す。 体温を測定いただき、 平熱であることを確認の上、 ご入館ください。/黄色のセンサー部分に手首を近づけて測定してください。/ SHOW YOUR COLOR #FFFFFFT.zip / The Editorial /年に一度、誰にでも誕生日はやってくる。/あの人を想うあたたかな気持ちが たくさんの人につながっていきますように。/ eggslut / G-SHOCK / L&HARMONY / uka / gram / DENIS MADE IN TOKYO / NOSE SHOP /他の誰でもない、あなたの鼻が主役のお店。/インディペンデントでハイグレードなフレグランス専業メゾンを 世界中からセレクトしてお届けすることで、 最上級の香りと共に暮らす喜びや楽しさをお伝えします。/ Follow your NOSE.(自分の鼻を信じて進め) / ALG BRIEFING / MIYASHITA CAFE+SOFTCREAM / KISSHOKARYO KYOTO / comma TOGO / jamba /パンとエスプレッソとまちあわせ/たまご はじめ ました/こちらの 待ち合わせスポットはとりかごと言います/ HARIO Lampwork Factory /もし割れてしまった場合はお直しもできます/ HIGHTIDE STORE / TINY DWELL SASAKI RYOHEI exhibition /訪ねたことのないサンフランシスコに行ったつもりで、 活動拠点の福岡市内を歩き、坂に建つ家を観察し描いていく。/制作背景が見えてくるような道具や端材といった、オブジェクトと合わせてお楽しみください。/ KITKAT Chcolatory / THE SHIBUYA SOUVENIR STORE /渋谷区にくらす・はたらく・まなぶ人々が渋谷の魅力を 伝える“渋谷のお土産”/ペットボトル 100%再利用 サスティナブルバッグ/生殺与奪の 権を他人に握らせるな!! /倍返し饅頭/ MOOSE KNUCKLES / SSZの仮店舗 TEMPORARY STORE OF SSZ / L’ÉCHOPPE /エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ FOOD HALL / TACO BELL / New York Ramen KUROOBI / PANDA EXPRESS / Mcdonald’s / MAGURO MARKET / Valume CAFE&BAR / NEW LIGHT /中華 青山 シャンウェイ/海南鶏飯食堂 5 /うしとら STAND / GRAN SOL TOKYO /周囲の方と距離をあけて ご利用ください physical distance PLEASE KEEP APART / PIZZAとナチュールワイン戦隊 DRA エイトマン/ミヤシタ 成ル/渋谷ワイナリー東京/ご利用のお客様に マスクを プレゼント中です ☆ / Small flowers blooming on the earth 2020 福津宣人/筋肉食堂/高タンパク 低糖質 低脂肪 低カロリー 今日の食事が明日の 自分のカラダを創る/ EEEEEEEEENNNNNNNNNSSSSSSSSSTTTTTTTTTUUUUUUUUUDDDDDDDDDI IIIIIIIIOOOOOOOOO /
    F.A.D JOINT EXTHIBITION / F.A.D 最高―!! / FAD! 最高!! /こうや、そうた、かざし、 Dy、ダイソン、すぐる、りょーが/좋아요❤️ /#FAD しか勝たん! ミリア❤️ / FAD しか勝たん!! / F.A.D しか勝たん! /チョアヨ/チョアE /宮下パーク/希実❤️ /좋아~❤️ 리자・가나/ F.A.D /みやした/死ぬ事以外かすり傷/さばくのはおれのスタンドだ/中川パラダイス/「SAIKO-Y ちゃんねる」 TOP DANDY / Porn hub / fuckin’ CORONA / To がんみ❤️ きましたお! toribird_go❤️ Harumi /目指せ甲子園!! /夏はこれから! FAD 最高 あつキ/弱気は最大の敵!! /ぱおん/かざし/ En THE BEST❤️ / EQUALAND SHIBUYA / TRUST /信じることからすべてはじまる。/信頼できる人やコミュニティが紡ぎ出す思考のつながりがこれからの時代のスタンダードな価値観となっていきます。/手指を消毒してください/作り手と消費者は、衣服に対する当たり前の意識をアップデートさせなければならない。/プラスチックと賢く付き合うってなんだろう? /太平洋にはごみが集まってできた「ゴミ諸島」が出現しています。/一人でも多くの方が、地球環境問題について考えるきっかけになればと願っています。/手指を消毒してください/現在、海へ流入するプラスチックゴごみは世界で年間 800 万トンと推計されており、その約 8 割は、内陸から流れ込んでいます。/環境汚染だけでなく、問題が複雑に絡み合う現代にあって、全ての課題を 0 か 100 で議論し解決することは不可能で、一時のアクションで持続可能な未来は作れない。/なくても困らないものを「断る」こと。「いりません」の一言は、自分から変えていくという、社会課題の解決に貢献していくポジティブな意思表示なのだ。/バイオマスフィルムを使用していることがお客さまにご理解いただけるよう、ロゴをつけました。/まるごとやさしい毎日へ/ポテトとジンジャーで世界 を平和にする/せんべいを、おいしく、かっこよく/明日わたしは柿の木にのぼる/手指を消毒してください/ NEW ERA / ellese TOKYO / MINOTAUR INST. /臭わない、 を着る。/ BOOK×写真×CAFE 天狼院カフェ SHIBUYA /人生を変える書店/お客様 が求める有益な情報が「本」であり、その情報を最適な形で提供するのが次世代の「本屋」の役割である、と定義をしています。/ instant / DAYZ / SAI collection / Campbell’s CONDENSED TOMATO SOUP 12・23・80 Andy Warhol/Face Records / GBL /あなたがいちばん最初に見た、ジブリの作品は何ですか?/ MAMMUT /エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ NO DRONES!/はなれてあそぼう 2 メートル Keep Your Social Distance はなれていてもできるあそび /ご注意 テーブル以外の利用はご遠慮ください。 物を落とさないようにしてください。/芝生ひろば LAWN FIELD 公園から落下する恐れのある遊具 (ボールなど)の使用は禁止します テントなどの工作物の設置は禁止します 芝生を傷める恐れのある履物 (ハイヒールなど)の使用は禁止します 長時間の芝生ひろばの占有はお控えください 芝生の管理上、定期的に散水する場合があります その場合は速やかにご退場下さい その他管理上、 利用を禁止する場合があります/ WARNING 防犯カメラ作動中/ MULTI-PURPOSE SPORTS FACILITY 〈多目的運動施設利用のご案内〉/ BOUL-DERING WALL 〈ボルダリングウォール利用のご案内〉/BOARD PARK 〈スケート場利用のご案内〉/区民以外の者が使用する場合の使用料は、本表使用料の倍額とする/登るな危険/こちらのベンチは ご使用をお控え下さい/新型コロナ対策として 間隔をあけてお座り いただいております/ SHIBUYA HACHI COMPASS 渋谷の方位磁針| ハチの宇宙 鈴木康広2020 /自販機専用 公園のゴミ箱ではありません。 自販機以外のゴミは 入れないでください。/自販機以外のゴミは捨てないでください/このゴ ミ箱は缶、瓶、ペットボトル専用です。/ 関係者以外 立入禁止/ 多目的トイレをご利用の際は パークセンターへお声がけ下さい/新型コロナウイルス感染予防のため このスペースでの滞留はご遠慮ください/ NO DRONES!/STAFF ONLY /利用禁止 SOSIAL DISTANCE / VALLEY PARK STAND /ハシグチ リンタロウ zymotic electro plants, 2017 『発酵発電所』/いまではどういう働きなのかがある程度明らかになり、加工技術となっている「発酵」は、発見されるまでは、誰も知らないところで、勝手に起こっていた。/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/田村 琢郎 Lovers /恋人を愛する様に自分を愛し 恋人を見詰める様に自分を見詰める/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/東 慎也 Humans /人間を、絵に描く。 バカっぽさ、苦しさ、真剣さ、そしてやっぱりバカっぽさ。 全部丸ごと描く。/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/ STOP●前の方との距離を空けて並びましょうKeep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance/STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ 12 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 11 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 10 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● /9 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 8 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 7 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 6 Please Wait Here 番号 に沿ってお進みください● / 5 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 4 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 3 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 2 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 1 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / STARBUCKS COFFEE

    ミヤシタパークを出て、代々木公園に行く。笠井さんが帰る。コンビニで買った酒を飲みながら歩いていると、地図アプリに表示されていた予定到着時間がどんどんのびていく。もう一度ミヤシタパークに戻り、横断して反対側へ。代々木公園に着くと、荷物を背負った人たちが列をつくって並んでいる。列は公園の奥の闇に紛れて、どこまで続いているのかわからない。先頭で薬や絆創膏、お菓子のようなものを配っている人がいる。同期がその人に話しかけると、ホームレスの人たちへ給付金申請の手続きを呼びかけていたという。住所がなくても、特別に給付金申請のための住所登録ができるようになった、渋谷区では明後日までに登録する必要があるとのこと(注:作者が話をちゃんと理解しているかどうか自信がない。本人確認が取れて住所登録の見込みがつけば、給付金の申請ができる?)。

    すこし前に署名を集めて、総務省に要望書を出したらしい。NHK デモの帰り? と聞かれたので、同期が、――こいつ(=作者)が詩人やってて、二人でミヤシタパークに行って詩を書いてきたんです、と答える。「みんなの宮下公園」を説明して、かつての宮下公園ナイキ化についての話を聞く。詩ができたら読ませてほしいといわれる。今度の木曜日に adidas 前に集まって、公園課と交渉するという。
    しばらく話したあとで別れる。公園の奥から実況音声が聞こえてくる。運動場が見えてきてたくさんの人たちがトラックのまわりを何周も走っている。ちょうどいいスペースを見つけて、同期がつくった音楽を聴いたり、思いつきでつくった歌詞を乗せて歌ったりしながら酒を飲む。コオロギの鳴き声を身近に感じたので、写真に撮ろうとする。フラッシュの操作に手間取っているうちに同期が近寄ってきて、コオロギが逃げてしまう。ブルーシートの家が点々と並んでいる。汗をかいたので、暗闇のなかで服をぬぐ。水飲み場で体を洗う。大雨がふってきて、知らないマンションの駐輪場に避難する。排水溝から水があふれ出してくる。休めそうな場所を探して、同期の家まで歩いて帰る。一週間後、山本と次に書く原稿の打ち合わせをして、二人でミヤシタパークに行く。「みんなのミヤシタパーク」最終調整。見逃していた言葉を足して、消えてしまった言葉を削る。

    ※2020 年 8 月 30 日時点にミヤシタパーク(商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」、 公園「渋谷区立宮下公園」、ホテル「sequence MIYASHITA PARK」)内に存在した文字により構成した。
    本作品は、山田亮太『オバマ・グーグル』(2016 年、思潮社)所収の「みんなの宮下公園」 (2010 年)で描かれた場所の10 年後を舞台としている。 制作にあたり使用した文字はミヤシタパーク内の掲示物の他、商業棟内テナントの店名お よび店内掲示物を参照している。店内掲示物のテキストを使用した店名を以下に列挙する (五十音順)。
    adidas Brand Center / EQUALAND SHIBUYA / The Editorial / En STUDIO / KITH. / 筋肉食堂/ GUCCI / SAI collection / THE SHIBUYA SOUVENIR STORE /渋谷ワイナ リー東京/ FFFFFFT.zip / GBL /天狼院カフェ SHIBUYA / TOKiON / NOSE SHOP / HIGHTIDE STORE / HARIO Lampwork Factory /パンとエスプレッソとまちあわせ/ VALLEY PARK STAND / MINOTAUR INST.

    ※以前から気になっていたミヤシタパークについて詩を書く機運が高まった。直接的なきっかけは、8月13日に起きた入園規制をめぐる騒動。

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